2008年 01月 31日
冬は寒い。 家で暖房の効いた部屋でぬくぬくと鍵盤を触って居れるときばかりで、過ごせるならこれ以上の幸せはないが、実際は礼拝堂のオルガンで練習する限り、快適な暖房は望めない。 寒さで風邪を引きそうになるのを我慢しながらの練習になる。パイプから吐き出された冷たい空気が頭から降りてくることもある。 譜読みで面白いのはカノン。 初めに出てきたメロディを正確に模倣するので、わかりやすいのだ。模倣の途中で、正確さが失われるとこれはイミテーションと呼称される。 今年はイースターが、3月23日だ。 その、一週間前の16日、教会で言う受難週にオルガン当番が巡って来た。 この日に弾く曲で、バッハの「 O Lamm Gottes,unschldig ・おお、汚れなき神の子羊よ」が、カノンで作曲されている。 それは、足鍵盤で、主旋律をへ長調で弾き、2拍遅れて、旋律が5度上のハ長調で出てくるのを両手の親指で交互に取りながら弾く。 残った両手の4本の指は、寄りかかったり離れたり、ずれたりしながら伴奏の2つの対旋律を弾く。 20小節で書かれたこの曲を3分で弾くのに、いったいどれほど練習をするのだろうか。 足や指の組み合わせの精密さは足使い、指使い、の決定や安定の判断があり、譜読み段階は一番神経を集中させる。 しかも譜読みをしながら、楽曲分析もやっている、という状態なのだ。 礼拝堂が使えるまで、時間待ちをしながら別のところに置かれた足踏みオルガンで小さな音で譜読み作業を続けているとき、どうでも良い話のために声をかけられることがある。運転中は話しかけないで下さい、といってあるにもかかわらず、だ。 適当に生返事をしてまた、作業は続く。 楽器を使っている横で、わざと大きな音を立てる子どももいる。この間は譜読みの最中に、オルガンの真横で、床を棒で、ダンダダダン!!と突かれて、とたんに集中力を失ってしまった。 私は、その時、足鍵盤のパートを心の中で歌い、両親指がそれを追いかけ、残りの指が伴奏をして、足はオルガンに空気を送るという芸当の真っ最中だったのだ。 そのあとパイプオルガンで練習を始めたが、もう、神経が集中を拒否して練習にならなかった。 受難の曲にふさわしく練習に妨害が入ると、何だか可笑しい。 時々こういうことはある。そうして、準備しておいた曲は回避されて、弾かれないまま、翌年以降に持ち越されてしまうのだ。 たとえば、クリスマスの時には、オクターヴのカノンの曲を、何百回練習しただろうか。 そうして、当日、オルガンの近くで、やたらに咳払いをする男がいたために、私は演奏の直前にこの曲を回避して、別の曲を弾き始めた。 立派なプリンチパルの笛を持たない、小さなオルガンの柔らかな笛よりも、この男の立派な喉笛で、一分半に過ぎない大事な音楽を台無しにされそうな気がしたからだ。 カノンは神と人との関係、つまり、神への服従を象徴する。 しかし、どうやら、ミサを盛り立てるためのバックミュージックとしか、捉えられていないのかも知れない。
by coppoumon
| 2008-01-31 10:04
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Comments(4)
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luciferase at 2008-02-10 15:53
こんにちは。
なんだか急にコップさんの演奏を聴きたくなりました。 今度、訪ねて行ってよろしいでしょうか? とはいえ、仕事が3月いっぱいまで忙しいので4月以降のお話ですが。 一つ心配なのは、心地よい音楽を聴くと、すごく眠くなってしまうんです。 心も体もリラックスしてしまうのでしょうね。 昨日もギターのライブを聴きに行って、うとうとしてしまいました。 心地よい音楽のなんとも罪深いことやら。 いつもしっかり聞こうとすればするほど、眠くなるのです。 聞くときに、耳をすませたくて目を閉じるのがいけない気もするのですが・・・ どうしたらしっかりと聞けるのでしょうね。
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coppoumon at 2008-02-11 21:15
luciferaseさま
いつでもこちらにおいでの時はお寄り下さい。しかし、オルガンは関東の方が立派です。3月20日は御茶ノ水のカザルスで椎名君が弾くので、来るように言われていますが、彼は立派な演奏をします。22日は川越さんが川崎ミュゼで。これは親子でパイプオルガンを楽しむ演奏会だそうです。皆さんでアイアイを歌うそうですから、眠くなりませんよ。 眠くなるのは良い演奏だからです。演説もそうらしいですね。気になさらずに、寝てしまいましょう。
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luciferase at 2008-02-13 00:07
そうなんですか!!
とはいえ、僕はぜひコップさんの演奏を聞いてみたいです。 お茶の水とか川崎なら近いのでとも思ったのですが、3月の後半は出張でいないので無理そうです。 今度、なんとか計画をたててみますね。 その時はよろしくお願いします。
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coppoumon at 2008-02-13 23:50
luciferaseさま
多分、9月28日は、パイプオルガンと10人ほどのヘルマンハープとのコンサートが予定されています。またご案内しますけれど、そのほかにも何かあるかもしれません。うちの家でも来て下さったら、ピアノなら弾きます。無理なさらずに、上手に関西方面へ出張を取って、おいで下されば、大歓迎ですよ。 |
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